第1回弁論期日の延期について
来る12月20日午前11時に予定されていた第1回弁論は,延期となりましたのでお知らせします。
訴訟救助(裁判所に納付する手数料額の一時猶予)に関し,新潟地方裁判所は,12人中11名について,申し立てを認めたのですが,被告国が地裁の判断に不服を申し立て(抗告),現在,これに対し東京高裁で審議中(決定待ち)の状態です。
このような状態で正式な弁論を開くことは相当でなく,また,記録全部が東京高裁に移送されており,現実に弁論を開くことも困難な状態であるというのが,地裁の見解です。
再延長後の第1回弁論期日は未定ですが,おそらく事前指定されている2008年3月6日になると思われます。
質疑
岩崎室長から,ペーパーに基づいて一通り説明を受けた後,質疑応答に入りました。
当職の質問事項は,大略以下のとおり。
1 PTは閣議決定されたものか? 単なる与党PTの案であるとすれば,法に基づく行政,公務員の政治的中立性の観点から見て,環境省職員が関与するのは問題はないのか?
2 いわゆるPT案について環境大臣,内閣総理大臣はどのように考えているのか?
3 関西訴訟最高裁判決を政府・環境省はどのように受け止めているか(病像論及び賠償金額)
4 150万円の根拠は?
5 昭電が150万円を出すのだろうが,折衝しているのか?(最近,チッソは拒否したが)
6 いわゆる「救済」を受けるのは,認定申請及び訴訟の取り下げが条件となると理解して良いのか?
2(1)について,「たとえば,『平成7年当時に感覚障害を有していた』という内容の診断書を平成20年に発行してもらう」という理解で良いのか?
胎児性・幼児性,遅発性水俣病がいわゆる「救済」から漏れることにならないか?
新たな水俣病被害者の救済策についての基本的考え方(案)
平成19年10月26日
与党水俣病問題に関する
プロジェクトチーム
1.基本的な考え方
平成7年の政治解決の救済策の対象者に準ずる者を救済するとの基本的な考え方を堅持する。
2.救済の対象
(1)1.の基本的な考え方によれば、「平成7年当時に四肢末梢優位の感覚障害を有する者」が対象となるが、これらの者とそれ以外の者をランク付け・区分けすることには反対も多く、実態上も困難であるため、「現に四肢末梢優位の感覚障害を有する者」を広く対象に一律に救済することとする。
(2)具体的には、一定の期日までに公健法議定申請をしている者及び保健手帳の交付を受けている者のうち、救済を求める者の申し出に応じて公的診断により「四肢末梢優位の感覚障害を有する者」であるかどうかを判定し、対象とする。
3.給付の内
(1)一時金
一時金を給付し、金額は150万円とする。
(2)医療費等の自己負担
医療費等の自己負担分を給付する。
(3)手当
療養等に関する手当を給付し、月額1万円とする。
4.新たな救済策の実施に伴う手帳制度等の見直し
新たな救済策の実施に伴い、新保健手帳の新たな受付を終了し、申請者医療事業(認定申請中の者に対する医療費の給付)とあわせ、現在給付を受けている者に配慮しつつ、制度全体の適正な運用を行う観点から必要な見直しを行う。
5.保健福祉重点地域の取組
かねてより課題の保健福祉重点地域の取組については、関係者の要望を踏まえて、引き続き検討する。
6.最後の政治救済
(1)今回の救済策は、平成7年に最終的かつ全面的な政治解決がなされたにもかかわらず、なお今日、その際救済から漏れたとして救済を求める方々が多数存在することに鑑みて行うものである。
(2)したがって、今回の救済策は、いかなる意味でも政治が取り組む最後の救済策である。
7.今後の取り運び
(1)上記のような意味で、前記6.のように最後の政治救済として、問題の全面的解決に向かうため、司法において係争中の者を含め、救済を求める者の理解を最大限得るよう努める。
(2)この救済策が実現するよう、費用の負担について、原因企業の合意を求めていくとともに、国、県それぞれの対応の具体化を求めていくこととする。
救済?
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きゅう‐さい【救済】
[名]スル1 苦しむ人を救い助けること。「難民を―する」2 神や仏の側からさしのべられる救い。キリスト教では、人間を罪や悪から解放し、真実の幸福を与えること。救い。
水俣病「救済」という言葉がよく使われる。私は,水俣病問題に関し,「救済」という言葉を使う際は,「いわゆる『救済』」ということにしているし,こうやって文章を書くときは,「救済」とカギ括弧を付けることにしている。
私はキリスト教徒だし,キリスト教神学は勉強しているので,「救済」という言葉を使われると,組織神学における救済論*1が頭に浮かんでしまう。
人は堕罪により,本来,その罰として地獄に行くべき存在なのだが,神は何故に,また,いかにして,罪人である人を−罰としての地獄から−救済し給うのか。古代教父神学の時代から論じられているテーマである。
私の「救済」という言葉に対して持つ感覚は狭すぎるのかも知れない。それを承知で書いているのだが,水俣病「救済」という言葉を聞くと,昭電や国は神で水俣病患者は罪人なのか,水俣病は罪がもたらした報いなのか,昭電や国は,「義務」ではなく一方的な恩恵で(本来救われる権利のない)水俣病患者を「救済」しているのか,と考えてしまう。
「救済」という言葉は,権利義務関係を曖昧にしてしまう。昭電(チッソ)と国は,不法行為に基づき被害者に損害賠償義務を負担しており,被害者は,加害者たる昭電と国に対して,損害賠償を求める権利がある。「救済」という言葉は,この関係を曖昧にする。この言葉は,誰が加害者で誰が被害者で,いくらの金額が賠償額として相当なのかという「法的思考」とは無縁である。
だから,私は,水俣病問題に関しては「正当な補償」という言葉を務めて使うようにしている(本当は「補償」という言葉にも問題があり,「正当な賠償」というべきなのだろう)。
私の言葉に対する感覚は,特殊で鋭敏なのかも知れないが,「救済」という言葉を無反省に使う人達の語感も少し問題があるように思う。
今後の弁論期日予定
2008年
3月6日
5月8日
7月10日
いずれも午前11時
(2月6日と掲載しましたが,誤記だったので訂正します。ご指摘感謝)
事前打ち合わせの様子
11月15日(雨)午前11時より新潟地裁3号法廷
(いわゆるラウンドテーブル法廷←この法廷は,天候が思わしくないとミシミシっと天井方面から音がするので音感神経症の当職は余り入りたくない。今日は新潟混声合唱団で戴冠ミサ曲の練習があるので音感神経を保全したいと思っていた)。
原告代理人 4名
被告昭和電工代理人(東京の弁護士さん)1名
国指定代理人 佐久間健吉氏外10名ほど
県代理人 弁護士3名(新潟市内の弁護士さん)の外 指定代理人10名ほど
各々出席,裁判所書記官(女性)も事前に出席
山崎まさよ裁判長(仕切るのがお得意)外2名の陪席裁判官が入廷し,一同起立してお出迎えした。まさよ裁判長は,「シット ダウン プリーズ」と述べた。
裁判官3名 自己紹介
裁判長から原告代理人への質問
訴訟救助抗告審の見とおしは?
12月に決定が出ると思われる。当方は,今月中に主張・立証を補充する予定。
その他
1名の追加提訴について,不備のあった書面を明日までに追完する。
(まさよ裁判長から2件ほど質問があったが,問答は差し支えがあるので,中略)
立証の見通しについて
個別立証については,陳述書,診断書を書証とする。
診断書は既に作成済みなので,遅くとも12月20日までに提出する。
第1回弁論は,口頭で意見陳述の予定。
証拠の記号について
原告
共通証拠(総論立証) 甲A○○号証
各論−個別原告13名+α??の書証)甲B?(まる1)−○○号証
病像論に関し医学論争が予想されるが,医者を人証にたてる。
その他,第1次,第2次各訴訟の関係書面も適宜提出する。
被告
昭電 乙号証
国 丙号証
県 丁号証
とする。
高裁の決定が何時出るかによるが,12月20日は正式な第1回弁論の予定。
その後の3期日を事実上予約した。
昭和電工の発言
「答弁書は12月20日より前に提出する。書証は適宜提出する予定」
国
特に発言なし。
県の発言
「行政救済は今後とも積極的に取り組む。しかし,本件訴訟については,県の法的責任が問われているので,争う姿勢になる。」
その後,当職が法廷棟1階を歩いていたら,環境省所属国指定代理人同士で(いずれもキャピキャピした比較的美人の女性職員)なにやらお話しをしていた(当職は「聞き耳ずきん装着」)。